「十分にしてほしければ、自分でせよ」という言葉があります。
2005年、パリの星付きレストランのシェフだったイヴ・シャルルは、ペルスヴァルの名高い折りたたみナイフ、ル・フランセをポケットに入れて、かねてからの不満を解消するべくティエールを訪れます。最高の鋼鉄でできたそのナイフと同じくらいよく切れるテーブルナイフを、自分のレストランのために作ってもらえないかと願って。しかし、最高の評判を持つそのナイフ工房にとっては、テーブルナイフは興味をそそらない存在でした。当時ペルスヴァルで作られていたテーブルナイフは、個性のないデザインで、6本セットで売られていました。焼き入れの処理も折りたたみナイフほど正確ではありませんでした。イヴ・シャルルは自分のレストランのために最高のテーブルナイフを望んでおり、そのためには伝統をも覆す覚悟でした。ナイフ工房への2回めの訪問で、イヴ・シャルルはその思いをさらに強いものにします。そしてとうとう3回めの訪問で、中途半端なことをするのを好まない彼は、1996年にエリック・ペルスヴァルによって創設されたこの企業を買い取って、自らテーブルナイフを作ることを決めたのでした。
こうして、折りたたみナイフの素材と同じスウェーデン鋼で作られたテーブルナイフの最高峰、9.47が誕生しました。イヴ・シャルルは出来上がったばかりのナイフを自分のレストランで使いはじめ、それはすぐに評判を呼びました。
一般家庭の主婦からミシュランの星付きレストランのシェフに至るまで、今や「9.47でなければ意味がない」と言われています。
この投資が実を結び始めると、伝統的な技術に最新のテクノロジーを適用するという新たな可能性が開けました。ナイフの知名度が上がるにつれて、レストランを続けるかペルスヴァルの経営をとるかの選択を迫られていたイヴ・シャルルは、新しいことに挑戦しようと後者を選択します。2008年以来、彼はすべてのエネルギーをペルスヴァルに注いでいます。
地域に根ざす伝統的なナイフ産業に、新世紀の分野横断的なアプローチを結びつけたところにイヴ・シャルルの才能があると言えるでしょう。それまでほとんど顧みられることのなかった商品へのニーズを作り出すこと、そしてティエールを世界に向けてのショーケースにすること、この2つにイヴ・シャルルは成功したのです。今日ペルスヴァルのテーブルナイフは、最も贅沢な折りたたみナイフとともに、"MUST HAVE"(必須アイテム)となっています。その後、イヴ・シャルルは、まるでファッションデザイナーのように、パリでたいへん人気のある肉屋(ユーゴ・デノワイエ)のためのモデルを発表しました。
ナイフの歴史に刻まれるペルスヴァルの成功は、献身的なプロフェッショナル達のチームワークの賜物です。ナイフ職人達はイヴ・シャルルとともに、さらに美しく信頼性の高い製品を作るために努力を続けています。そして彼らは、仕事への愛情を若い職人達に日々伝えています。時が来れば、そのまた次の世代へと技術が引き継がれていくように。